最低賃金について定めた最低賃金法は昭和34(1959)年4月15日に公布されました。
最低賃金法には、雇用主が労働者に対して最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない旨が定められています。雇用主は、最低賃金を適用する労働者の範囲や具体的な金額などを労働者に対して広く知らせなければなりません。
最低賃金の金額は時間給として定められています。
労働者に支払われる賃金にはほかに時間外割増賃金や休日割増賃金、深夜割増賃金、賞与(ボーナス)、通勤手当、臨時に支払われる結婚手当や皆勤手当、家族手当等など、さまざまな項目があります。しかし、最低賃金を計算するときにはこれらの給与項目は除外されます。
最低賃金の対象となるのは、労働者に対して1カ月ごとに支払われる基本給のみとなっています。
最低賃金の全国平均額は近年緩やかに上昇しています。
平成23(2011)年の最低賃金の全国平均は前年度から7円引き上げられて737円でした。しかし令和3(2021)年8月の段階では、最低賃金の全国平均は930円にまで上がっています。
最低賃金の金額は毎年変更になるので必ずチェックしておきましょう。
かつては、雇用者と労働者の間で最低賃金以下の給与額を設定しての雇用が合意されるケースもありました。しかし近年では多くの事業所が最低賃金の額を把握し、適切な給与額を提示して雇用をおこなうようになってきました。
万一最低賃金以下の待遇で労働をさせたときには、雇用者はその差額を支払わなければなりません。状況によっては罰金が課されることもあるので十分注意しましょう。
最低賃金というと都道府県ごとに定められている最低賃金のことを指すと思われがちです。しかし最低賃金にはこの地域別最低賃金のほかに、特定の産業に対して適用となる特定最低賃金というものもあります。
まずは、2種類の最低賃金の違いをチェックしていきましょう。
各都道府県において定められた最低賃金を、地域別最低賃金と呼びます。
地域別最低賃金は各都道府県につき1つの金額が定められており、産業や職種にかかわりなくそのエリアの事業所すべてに適用されます。また、最低賃金は正社員だけでなく契約社員や派遣社員、臨時や嘱託の職員、パートやアルバイトなど、あらゆる雇用形態に適用されます。
地域別最低賃金には、すべての労働者の最低限の生活を保証するセーフティーネットの意味合いがあります。すべての労働者が日本国憲法で定められている健康的で文化的な最低限度の生活を、営むことができるよう配慮されているのです。
国内の最低賃金を総括する中央最低賃金審議会という機関は毎年、地方最低賃金審議会に対して最低賃金額改訂のための目安を提示しています。地方最低賃金審議会ではこの目安や地域の実情を加味し、最低賃金の具体的な金額を決定していきます。
こういったフローがあるために、最低賃金の金額は毎年のように変更になります。
特定の産業に対して定められた最低賃金は特定(産業別)最低賃金と呼ばれます。
業種によっては、地域別最低賃金よりも高い水準の最低賃金を定めたほうがよいケースがあります。特定の業種に従事する人が損をせず働けるよう、厚生労働省は関係労使の申し出に基づいて特定最低賃金の調査や審議をおこなっています。
特定最低賃金は製造業や鉄鋼業、特定の商品を販売する小売業などの業種に対して定められます。令和3年3月の段階では、各都道府県の労働局や全国の最低賃金審査会によって設定されている特定最低賃金の件数は227件となっています。
特定最低賃金は地域別最低賃金よりも高い水準になっていることがほとんどです。地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、より高い方の最低賃金額を支払うようにしましょう。
雇用者が労働者を雇うときには、最低賃金の金額を把握する必要があります。
最低賃金は厚生労働省のウェブサイトで確認できます。また、労働基準監督署や都道府県労働局労働基準部賃金課室に問い合わせて最低賃金をチェックすることもできます。
事業所が時間給を採用しているのであれば、その額が最低賃金額以上かを確認しましょう。日給制の事業所の場合には、日給を1日の所定労働時間で割ったときに最低賃金額を超えているかどうかチェックしておきましょう。月給制の場合にも、1ヶ月の平均所定労働時間を算定すれば最低賃金額を上回っているかどうかを確認できます。
給与の一部または全部を歩合給で支給している場合には最低賃金額を下回ってしまうケースがあるので注意が必要です。この場合には、賃金の総額と賃金算定期間の労働時間数をチェックし、1時間あたりの賃金額を算定しましょう。
雇用主は労働者に対して最低賃金以上の額となる給料を支払う必要があります。最低賃金の金額よりも低い給与額で雇用契約をした場合には、契約自体が無効となります。
もしも雇用主が最低賃金未満の給料しか払っていなかった場合には、雇用主に差額の支払い義務が課されます。
地域別最低賃金以上の給与を支払わない場合には、最低賃金法40条に基づき50万円以下の罰金に処されます。また、特定(産業別)最低賃金以上の給与を支払わない場合には、労働基準法120条と24条に基づき30万円以下の罰金が課されます。
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労働者を雇用するときには、基本的には地域別最低賃金以上の給与を支払わなければなりません。ただし、状況によっては最低賃金を個別に減額して雇用をおこなうことが可能となります。
地域別最低賃金の適用外になる人には以下のような条件があります。
・精神・身体の障害によって労働能力が著しく低い
・試用期間中である
・認定職業訓練を受けており、厚生労働省令で定められている一部の労働者である
・軽易な業務に従事している
・実作業時間が少ない断続的労働に従事している
また、特定最低賃金の適用外になるケースは以下の通りです。
・18歳未満または65歳以上である
・雇入後一定期間を経過しておらず技能を習得中である
・該当する業種に特有の軽易な業務に従事している
これらの条件に該当する方に関しては、最低賃金を適用すると雇用の機会がかえって狭まってしまう可能性があります。あらゆる人が社会で活躍できるため、また人材を育てるためという意味合いから、地域別最低賃金または特定最低賃金の減額の特例が認められることがあるのです。
労働者に対して支払う給与の金額は雇用者にとって収益性に関わる重要なポイントです。最低賃金の平均額は現在少しずつ引き上げられており、今後も金額は上がっていくと考えられます。労働基準法の最低賃金額を守り、生産効率をアップさせるなどして収益性のバランスをとっていきましょう。
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